World Englishesとは?【新しい概念からみる世界の英語】

Hi, guys! 英語とポルトガル語を学習中のBrancaです。

日本の学校では主にアメリカ英語が採用されているので、私たちはアメリカ英語を「正しい英語」として勉強していますよね。

今はインターネットのおかげで、アメリカ英語だけでなくイギリス英語やオーストラリア英語、はたまたインド英語など、さまざまなアクセントを持つ英語に簡単に触れることができます。

そこで、21世紀の英語として「World Englishes」という概念が生まれてきました。

Englishに複数形のesがつくなんて、なんだかちょっと違和感もありますよね^^;

これは、世界に広がる英語は、同じ単語であったとしても、その国々の文化的、環境的影響などから異なる意味を持っているということを提唱した概念です。

例えばアメリカとイギリスの英語でも、同じ単語でも違う意味を示すということは結構あります。

First floorはアメリカ英語では1階ですが、イギリス英語では2階を意味してしまいます。

そのように、英語といっても場所が違えば異なる表現が使われているので、世界の英語となると違うのも当然と言えますよね。

今回は、そのWorld Englishesについての意味や問題点について、シンガポールの英語や、実話のストーリーを例に調べまとめてみました。

World Englishesの概念は、英語を学ぶということに対して、ある意味気楽に考えられるきっかけになるとも思います^^

ぜひ気軽に読んでいただけると嬉しいです。それではいってみましょう♪

目次

World Englishesは21世紀型の新しい英語の概念

現代を連想するイメージ

“World Englishes”とは、直訳すると「世界の英語たち」。

つまり「世界で話されている全ての英語」のことを指します。

この言葉は、英語には複数の種類があるという概念から生まれた用語で、インドの言語学者であるBraj B. Kachru氏が1985年に提唱したのが始まりとされています。

現在世界には約19億人もの英語話者がいるとされていますが、そのうちの70%はノンネイティブ。

つまり、英語ネイティブといわれる人々は3億人ほどしかいないということになります。

一般的にアメリカやイギリスなどの標準的な英語の他にも、世界には多様な英語があり、それぞれの特徴もありますよね。

同じ英語であっても用いる表現や単語に含まれる意味が変わるのは、その国々の文化的背景や環境などの影響が大きいからです。

そのような多様性を認めずに、ネイティブの英語だけが正しいものだとすることは適切ではないのではないか、というのがWorld Englishesの根底にあります。

World Englishesには「伝達手段としての英語」と「文化の多様性の担い手としての英語」の二つの側面があると言われています。

そのため、World Englishesは世界のすべての英語が尊重されるべきであるという考えから、”Englishes”と複数形で表記されている訳です。

そのWorld EnglishesについてKachru氏は次のように、世界の英語話者を3つのゾーンに分類し定義しました。

World Englishesの定義を表すKachruの同心円モデル

Kachru氏は、世界での英語を示すために「同心円モデル」という表として、世界の英語話者を次のような3つのゾーンに分類しました。

同心円モデルの画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kachru%27s_three_circles_of_English.svg

Inner Circle ―アメリカ、イギリスなどの母語として英語を使用する国々。約3億人が含まれるものの、その割合は全体の30%未満。

Outer Circle ―インドやアフリカといった、主にかつてイギリス植民地だった国々。その歴史があるため、英語を母語または第2外国語として使用する。

Expanding Circle ―英語を国際語とし、ビジネスや教育のために英語を学んでいる国々。英語話者に占める割合はもっとも大きい。

日本は一番外側のExpanging Circleに位置しているので、一番後天的に英語に触れる環境ですね。

Expanding Circleの国が英語を学ぶ際には、Inner Circleに属するアメリカ英語かイギリス英語を模範とし学校教育で教えられています。

そのように学んだ英語と比べると、確かにOuter Circleに属するインドの英語などは独特な特徴があることがわかります。


この同心円モデルという英語の分類は頷けるものがある一方、3つの分類しかないため、必ずしも正しいとは言えない点もあるかもしれません。

ですが、世界における英語が使われている頻度や浸透度、他国とのコミュニケーション度などを考えると、おおよそこの3層に分けられているようにも思います。

実はWorld Englishesが提唱された当時、Inner Circleのネイティブを基準に、世界で同じような英語を使うべきという風潮があったそうです。

Kachru氏は、そのような風潮は、特にOuter Circleに属する文化的背景を持つ英語を異なるものにしてしまうと危惧しました。

そのため、英語を使うにあたって、国を超え、文化を超えた多文化・多言語の中での新たな視点が必要であると提唱したんですね。

続いて、このWorld Englishesが示した英語の違いがわかる、シンガポールの英語の特徴についてみていきましょう。

シンガポールの英語から見るWorld Englishesの例と問題点

シンガポールを連想するイメージ

Outer Circleに属するシンガポールでは、国語はマレー語、公用語として英語・中国語・タミル語があり、日常的に英語は広く用いられています。

Singapore+Englishという意味でSinglish(シングリッシュ)と呼ばれることもあります。

基本的に学校でイギリス英語を学ぶものの、日常生活ではシンガポールの多言語と文化が織り交ぜられた独特の英語の方が浸透しています。

その特徴としてよく挙げられるのは、独特な文法、個性的なcanの使い方、そして語尾にlah(ラー)がつくことなどがあります。

他にも個性的な特徴もありますが、上記の3つはシンガポールの英語を知るうえで重要なポイントでもあります。

それでは先ほど挙げた特徴についてもう少し詳しく紹介します。

シングリッシュの独特な言語の特徴

シンガポールの英語では、一般的な英語と異なる特徴として、基本的に「簡略化」された文法を使います。

例えば、動詞は時制や主語に合わせて過去形にしたりsなどもつけず、基本的に全て「原形のまま」で使われます。

昨晩私は映画を見た。という文章であっても過去形のwatchedは使わず、I watch the movie last night.となります。

また、助動詞canも、「できる」という意味で「can,can!」と返答したり、lah(ラー)も念押しや強調のために「OK, lah!」というように語尾に用いられます。

lahは中国語の「了」の影響からきたものらしいので、ここにもシンガポールの多言語の影響が見て取れますね。

その他にも、食べるという意味で「makan(マカン)」(マレー語の単語)が使われたりと、さまざまな特徴があります。


そのように文化的な影響を強く受けて変化していった英語について、World Englishesではそれらも正しい英語として受け入れるというスタンスです。

ですが、一方でそのように強い訛りのある英語は、シンガポールの人以外にとっては理解しにくいことがあるのも事実です。

実際、シンガポールではこのシングリッシュを廃止しようと取り組んでおり、テレビ放送などでは使用が禁止されているそうです。

シンガポール政府は国民に対し、正しい英語を話すように求める「Speak Good English Movement(正しい英語を話す運動)」にも取り組んでいます。

             
World Englishesには「伝達手段としての英語」と「文化の多様性の担い手としての英語」の二つの側面があるといいます。

世界で話されている英語はどれも正しいという概念は素晴らしいと思いますが、世界中の人々が意思疎通を図るのに、それぞれの国の文化背景の知識があるわけではありませんよね。

文化を大切にした英語というものに配慮しながらも、やはりある程度の基準を設けた伝達手段としての「正しい」英語も必要だということがわかります。

切ない初恋ストーリーからわかるWorld Englishes

手紙のやり取りを連想するイメージ

アジアだけでなく、アメリカ英語とイギリス英語といったネイティブの間でも、文化の違いから異なる英語表現が多く見られます。

その違いゆえに気持ちがすれちがってしまった、実話の切ないストーリーを紹介します。


時代は第二次世界大戦末期。イギリスに駐留していたアメリカ陸軍の男性ノーウッドと、イギリス人の女性ジョイスが恋に落ちたことから始まります。

楽しい時間を過ごしていたのも束の間、その後ノーウッドには軍から出動命令が下されました。

二人は会えない期間も手紙でお互いの心を通わせ、気持ちに確信を得たノーウッドは、プロポーズの意思を込めた手紙を送りました。

しかし、ジョイスはあっさりとそのプロポーズを断ってしまいました。

二人の気持ちは同じだったはずなのに…ノーウッドは信じられませんでしたが、手紙の他に意思を確認する手段もなく、そのまま二人は別々の人生を歩むことになったのです…。


ノーウッドがプロポーズの手紙に書いたのはこのような言葉。

 “Would you come to the states and make my house a home?”

これは、「アメリカに来て、僕の家を君にとって居心地のいい住処にしてほしい」というプロポーズの意味を込めた言葉でした。

このフレーズは、アメリカの詩人エドガー・アルバート・ゲストが1916年に詩の中で初めて使った表現。

make my house a home「家を居心地のいい場所にする」という叙情的な表現が人気で、当時のアメリカではロマンティックな表現として有名だったと言われています。

二人の気持ちは同じだったのになぜプロポーズを断ってしまったのか…その理由はそれぞれの英語の解釈にあったのです。

イギリスではその表現はまだ知られておらず、ジョイスはプロポーズの言葉を「make +目的語+名詞」の構文として“make”を「整える」と解釈。

そのため、“make my house a home”を「家を整える、家事をする」→「家政婦としてアメリカに来てほしい」と捉えてしまったのです。

この一文の解釈の大きな違いで、二人の気持ちはすれ違ってしまったんですね…。

ですが実は、70年の歳月を経てふとしたきっかけから、なんと二人は再会することができたんです!

そうして、すれ違いになった理由もわかり、やっと互いの気持ちを確認できた…という実話でした。

(こちらの番組HPにストーリーの詳細があります→奇跡体験アンビリバボー)


今であれば他にも真意を確かめる手段がありますが、当時は電話も、会いに行くこともできなかったため、手紙に思いを込めるしかなかった時代。

同じ英語とはいえ、話されている場所や人々によっても異なる表現、異なる解釈をすることが、このストーリーからもわかります。

そう考えると、文法的に正しい英語という観点だけではなく、相手にきちんと真意が伝わっているか、という意味での正しい英語を使うことも大切だと改めて感じますね。

まとめ

世界を連想するイメージ

今回は、World Englishesという21世紀の新しい英語に対しての概念についてまとめてみました。

世界で使われている英語すべてを尊重し、文化的背景を含めた特徴のある英語と捉える考え方。

英語と一口に言っても、ネイティブの英語にも違いがあり、それは文化の違いや環境による特徴ともいえます。

シンガポールの英語のように、英語が公用語であれど、その言葉に文化的背景からくる意味合いも含まれているので、単純にネイティブの英語だけが正しい、とも言い切れないという考えもわかります。

ただ、World Englishesには「伝達手段としての英語」と「文化の多様性の担い手としての英語」の二つの側面があるといいます。

文化の多様性も大切にしながらも、世界の人に考えを正しく伝えられる伝達手段としての英語もやはり必要ですよね。

表現や文法としては正しい英語であっても、相手に対して本当にその自分の真意が伝えられているのか。

それを第一と考えた時に、洗練された表現やスラングを使うよりも、わかりやすいシンプルな表現を用いたほうが意味は伝わりやすいこともあるということです。

言語学者のKachru氏が唱えた同心円モデルの英語の考え方について、当てはまらない部分もあるかと思います。

ですが、それは何事においても同じであって、視点を変えると正しいことが正しくなかったりもします。

あくまで重要なのは、柔軟な視点を持つことと、その視点を自分で自覚して使い分けていくことなのではないかと思います。

英語を楽しく学習していくうえでも、World Englishesという考え方は、学習の幅も広がり、コミュニケーションスタイルも柔軟に考えていけそうです。

これからも英語や言語に対して、いろいろな視点から見つめて楽しく言語を学んでいきたいと思います^^

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました♪

I hope you’re having a good day!

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このブログを運営している人

ブラジル音楽がきっかけでポルトガル語の学習を独学で始めました。
英語とポルトガル語をたのしく学ぶために、いろいろ試行錯誤中です。
学んで得た知識や気付きなどを記事にしています♪

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